月下の逢瀬

「流産……? マジかよっ!?」


気付けば、片桐につかみ掛かるようにして聞いていた。


「落ち着け。切迫・流産。流産しかかってる状態だったんだ。
今は点滴受けて寝てる」


安静にしていれば大丈夫だから、と首元にある俺の手を解いて、片桐は俺を見た。

その瞳には、明らかに怒りの色があった。


「何を興奮することがある? 流産してもらったほうがよかったんじゃないか。
椎名を、お腹の子をお前は幸せにできない。いたずらに苦しめるだけだろう」


「な……っ!? 馬鹿なこと言ってんじゃねぇよ! いいから真緒の病室言えよ!」


何でこいつが知ってるんだろう?
そんな疑問よりも、真緒のことが気になって。


「702号室。寝てるからそっと行け」


その声を背中で聞いて、駆け出した。