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『あたしと一緒にいてよ。ずっと、一緒に』


プールサイドから落ちた玲奈は、病院に搬送されて、処置を受けた。

背中の痛みと、傷からきた熱にうかされながら、それでも俺の手をとって、玲奈は言った。


『理玖くんが、好きなの。あたしだけをずっと好きでいてほしい』


『……何でそこまで、俺に固執すんだよ』


俺が軽く振り払った時、玲奈はわざと落ちたように思う。
こんな傷を負ってまで、俺といたいと言うことが信じられなかった。

取り返しのつかない傷だということは、さっき医師から聞いていた。
一生残る醜い傷痕と引き換えにするほど、俺は玲奈と繋がりはない。

単なるクラスメイトだったはずなのに。


『あたしの傷の償い、してくれるって言ったでしょ……? 償いの代わりにずっと、あたしのそばにいてよ』


涙を滲ませて、声をつまらせて言う玲奈はあまりにも必死で。
俺は弱々しく握られた手を振り払えずにいた。
傷を負わせたことは、俺にも責任がある。
できることなら何でもして償いたい、とは言ったけれど。


『俺……お前のことよく知らねーよ。そんなやつといて、満足なのかよ』