月下の逢瀬

「――ん……。あ、れ?」


ふ、と目を開けると、見慣れない天井があった。
白い天井。どこだろう?


ゆっくり体を起こして、辺りを見渡すと、そこが保健室だということに気がついた。


そうだ。あたし、保健室に行こうとして……。


ドアをノックしたところまでは覚えている。
そこであたしは気を失ってしまったんだろうか。


今、何時だろう?
きょろきょろと見回しても、時計がない。


「起きた?」


不意に白い衝立の向こうから声がして、ひょこりと顔が現れた。


「……あれ? えと、先生、あたし……」


現国の片桐先生のにこやかな顔だった。


「驚いたよ。ドア開けたら倒れてるんだから」


寝不足みたいだよ? と先生が続ける。


「寝たらすっきりした?」


「……あー、はい」


こめかみに手をあててみると、さっきまであんなにぐらぐらとしていた頭がすっきりしていた。


「今、4限目が終わりかけたところだよ。午後から授業にでるか?」