月下の逢瀬

この子からしてみれば、あたしなんて憎いだけだよね。
お姉ちゃんを傷つけた張本人なんだもん。


「あ、あの。あたしはこれを渡したかっただけなんです。これで失礼します」


花束を手渡して、そのままエレベーターへ向かおうとする。

と、行く手を遮るように目の前に立ち塞がれた。


「待って下さい。素敵な花束、ありがとうございます」


「い、いえそんな」


「あの、お茶でもいかがですか? と言っても、ここには自販機くらいしかないですけど」


琴乃ちゃんは肩を竦めてくすりと笑った。


「姉の学校での様子とか、お聞きしたいんです。
それに、さっきから一人で退屈してたの」


ね? と小首を傾げて。


「向こうが談話スペースなんです。行きましょ?」


と先を歩いて行ってしまった。


「あの、でも」


背中に声をかけても、すたすたと行く彼女は振り返らない。

とにかく、少しだけ話をして、早々に帰るようにしなくちゃ。

小さく息を吐いて、後を追った。