月下の逢瀬

人の姿のなくなった廊下を歩く。
視界はぐらぐらと揺れていた。


やばい。本格的にめまいがしてきた……。


校舎の一階奥にある保健室を遠くに感じながら、あたしはふらふらと進んだ。

天井が頭上にも足元にもあるような感覚。


せめて、保健室までしっかり意識を、と思いながら歩いて、ようやく保健室の表札のあるドアまでたどり着いた。


「す、すいませ……」


ドアをノックすると、中から返事が聞こえた。

よかった、ついた、とほっとした途端、目の前が真っ暗になった――……。