月下の逢瀬

「な……なに……?」


ケータイから顔を上げた理玖と、目があった。

校舎のどこかで、騒ぎが起きている。
悲鳴がいくつもあがり、人が走る足音がする。




「校舎から人が落ちたぞーっ!!」




叫び声に、理玖の顔が歪んだ。
と同時に、教室を駆け出て行った。


悲鳴。
悲鳴。
叫び声。


「救急車呼べっ」


「誰が落ちたの!?」


「事故? やだっ!」


廊下を走る生徒たち。
広がる騒ぎ。


動けずにいたあたしは、その騒ぎの中心が誰なのか、わかっていた。


誰が、どうして落ちたのか。



「……玲奈、さん……っ」


落ちたのは、きっと玲奈さんだ。
その玲奈さんを落としたのは、あたし、だ。

あたしが、玲奈さんを。


「いや……、いやああああ……ぁっ!」


自分のものともわからない悲鳴の向こうで、救急車のサイレンの音がした。