月下の逢瀬

「も……やだ……」


もう潰れてしまいそうなくらい、胸が痛い。
いっそ体ごと潰れて、いなくなってしまいたい。


「馬鹿なこと言うな。お腹の子供は椎名一人の子供じゃない。
宮本の子供でもある。婚約していても」

「理玖の子供でも! 理玖は父親にはならないもんっ。

理玖の家、久世さんの家から援助を受けてるんだよ? 潰れかけてた会社が持ち直すくらい。
あたしのせいで理玖の家にまで迷惑がかかるなんてことになったら嫌だ!


何より……話したとしても、理玖があたしを選んでくれるなんてこと、無い……」


家を捨ててまで、あたしを選んでくれるはずない。
全てと引き換えにするほど、理玖があたしを想ってくれているはずがない。


さっきの光景がずっと頭を占めている。
あれが現実。
あたしが入り込むのが間違いだった二人の隙間。


ぱたたっ、と音をたてて制服のスカートに涙が落ちた。