月下の逢瀬

「……だって、だって好きだった。諦められなかった……っ!」


「じゃあ何で久世に遠慮する? 好きなら奪えばいいだろう。久世に宮本を縛る権利はない」


縛る権利。
彼女は持ってる。手に入れて、確実なものに変えてしまってる。


「二人は婚約してる。
玲奈さんは、理玖をずっと縛る権利を……持ってるよ」


「……婚約?」


高ぶる感情のままに口にしたあたしの言葉に、先生が目を見開いた。


「先生の、言う通りだよね。あたしは理玖を望んだらいけなかったんだ。
あたしが側にいるだけで、理玖に迷惑がかかるから……」


涙が止まらない。


否定しかされない恋は、あたしの全てだった。
だから、自分に言い聞かせていた。
夜の間だけなら、きっと許されると。
でも、それは都合のいい言い訳に過ぎなかったんだ。


最初は、好きな人の側にいたい、それだけが願いだったのに。
それだけなら、咎められることなんてなかっただろうに。
あの夕暮れの図書室に戻れたらいいんだろうか。
理玖に想いを打ち明けなければ。
密やかに見つめるだけの想いに留めておけば。