月下の逢瀬

「別に、何も」


「何もない、なんてことないんだろ?」


答えられずにいると、再びため息をつかれた。
確かに、あたしの態度は先生から見たらおかしいのかもしれない。


だけど。


しばらくの沈黙の後、


「わかった。久世がお前にとって優先対象なんだな?
お腹の子供よりも、久世が大事なんだな?」


先生が投げやりに言った。
その酷い言い方にカッとなる。


「っ! そんなことないっ」


「いや、そう言ってるも同然だろ。久世がいるから宮本に相談もできない、なんて。
そんなに久世を気にするくらいなら、最初から宮本と関係を持たなかったらよかったんだ」


「…………っ!」


いつもの先生とは違う、キツイ口調。
理玖と関係を持たなかったら、なんて。


そんなこと言われたら、全ての夜が否定されてしまう。
幸せだと思えたあの時間さえ。
あたしの恋が、間違いだったと。


涙が勝手に溢れた。
認められないとわかっているからこそ、否定されたくなかった。
あたしの想いを知っている先生には。

それは本当に、勝手な言い分だけれど。