月下の逢瀬

「……宮本には、もう言った?」


先生の言葉に、さっきの光景をまざまざと思い出した。
あの楽しそうな、玲奈さんの笑顔。


「…………っ」


息さえつけないほど苦しくなって、声がでない。
返事の代わりに首を横に振った。


「じゃあ、早く相談した方がいい。これは椎名一人の問題じゃないんだから」


もう一度、首を振る。
玲奈さんがいるのに、言えるはずない。


「言わなくてどうする。父親は宮本なんだろ?」


「れ、玲奈さんが、いるから……」


「また久世か」


先生が呆れたように言った。
あたしの体を離して、顔を覗き込む。


「どうして椎名はそこまで久世に遠慮するんだ? 負い目でもあるのか」


「……、ない、けど」


「それならいいだろ。久世のことは今は気にするな。宮本と椎名の問題なんだから。

だから早く宮本に相談しろ? 時間を引き延ばしても、いいことはないんだから」


「…………う、ん」


視線を逸らして曖昧に頷いたあたしに、先生が大きなため息をついた。


「なあ、久世と宮本には何か事情でもあるのか? 椎名のその遠慮は異常だぞ」