月下の逢瀬

こっち向いてみろ! と無理矢理顔を上に向けられた。
両頬を、手のひらが包む。
その先には、怒ってる先生の顔。


「一人で泣かせたくないから来たんだ。
言え。俺が全部聞いてやる。
椎名のそばにいるから」


力強い声、真摯な瞳。


「だっ、て。無理だもん、あたし……」


首を横に振る。


「不安がらなくていい」


逸らすことのない瞳。
あたしの心に入ってこようとする瞳。


どうしよう。
自分がかたかたと震えているのがわかる。
さっきから止まらない震え。


「大丈夫。な?」


にこり、と先生が笑った。
と、次の瞬間、すっぽりと包むように抱きしめられていた。


「言え、椎名」


きつく、だけど優しく。


「…………してるの。
あたし、妊娠してるの」


呟くような告白。
口にしてしまった。


あたしを抱く先生の腕に、いっそうの力が込められた。