月下の逢瀬

庭を抜けると、理玖の家の門扉がある。
そこから裏手に行けば、理玖の部屋。

幼い頃に何度も行き来した道は、今も目を閉じていても歩いていける。

けれど、あたしの足はとまってしまった。垣根の陰に、急いで身を寄せた。



「じゃあ、お邪魔しましたー。夕飯まで頂いちゃって、すみません」


「あら、人数が多い方が楽しいもの。また来てちょうだいね。
理玖、ちゃんと送ってあげるのよ」


「わかってる。行くぞ、玲奈」


玄関先、理玖と玲奈さんがいた。
帰るところなのか、見送りに出たおばさんと仲よさ気に話していて。

二人は手をつないで、寄り添うように駅の方へと歩きだした。

街灯に照らされて、玲奈さんの笑顔が見えた。

幸せそうな、楽しそうな笑顔。


二人の背中が消えるまで、あたしは身動きとれずに見つめていた。





「……っく。ひ……っ」


ぼろぼろと涙が溢れ、力なく座り込んだ。

心が、押し潰される。
今、一番見たくなかった光景。