月下の逢瀬

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「……っ。う……げほっ」


「真緒ー、大丈夫?」


「……ん。何とか……」


トイレの水を流して、あたしは目元に滲んだ涙を拭った。


「はい、これ。うがいしなよ」


ドアの上から、結衣がお茶のペットボトルを差し出してくれた。


「ありがと」


受け取って、冷たいそれを口にした。
気持ち悪さの残る口中を洗い流してから、外へ出る。


「……ん、すっきりした。結衣、ごめんね」


「気にしないでいいって。
今さー、胃腸にくる風邪が流行ってるっていうから、それじゃない?」


「そうかも。ヤダな、もう」


昼ご飯を食べた後、急に気分が悪くなってトイレに駆け込んだ。
幾度か嘔吐を繰り返して、吐き気はおさまったものの。
胸が焼けるようなムカつきは残っていて、あたしは顔をしかめた。


「キツいでしょ。早退する?」


「んー、午後は進路説明会だけだよね? 座って話聞くだけだろうし、残るよ」


「キツくなったらさ、ちゃんと言いなよ。講堂は寒いから、風邪には悪いかも」


「ん、了解」


心配そうに言う結衣に、笑ってみせる。