月下の逢瀬

「椎名は宮本に縛られたままじゃダメなんだ。相手に届かない想いは、椎名を壊してしまう。
水は一所に溜まったままだと、腐るんだ。

だから、変化するしかない。
それは当たり前のことで、間違いじゃないんだよ」


「せんせ……」


見透かされてる。

あたしはため息を一つついて、小さく笑った。


「敵わないや。先生って、あたしが思ってること、手にとるように分かるの?」


「そうでもないよ。今だって、椎名にいつ手を振りほどかれるかヒヤヒヤしてる」


「何それ」


くすくすと笑うと、先生が握る手を玩ぶように振った。


「椎名は笑ってる顔が一番かわいいな」


「ほら、口が上手い。さらりとそんなこと言わないで」


「思ったこと言っただけだよ」