月下の逢瀬

と、先生が手を引いた。

それに弾かれたように、視線を先生に向けると、柔らかく微笑んでいて。


『こんな話をしたあとに、卑怯だよな。すまない。
だけど、考えておいて欲しい』


『…………あ』


見透かされた。
あたしの中の揺らぎを。

顔が真っ赤になるのがわかった。


『か! 考える時間なんていりませんっ! あたしには、理玖が……っ』


『いや、時間は必要だよ。ちゃんと、考えて?
俺、待つからさ』


さあて、と先生は立ち上がって、あたしの頭にふわりと手をのせた。


『帰ろ。そろそろ夕暮れだし、冷えてくる』


返事ができずに、俯いた。