佐和さんとは違う。

似ていると言われたことが無性に怖くて、視線を逸らした。


あたしは違う。
自分を燃やしつくしてしまうようなこと、しない。
理玖と共に死ぬような真似、しない。


『先生、あたしと佐和さんを、一緒にしないで。あたしに構うのも、佐和さんの面影を探してるからじゃないんですか?
あたしは、佐和さんじゃないです』


はねつけるように言うと、先生は握る手を確認するかのように、きゅ、と力を入れた。


『佐和と椎名は違う。当たり前だな。
でも、椎名は佐和の話を聞いて、理解できるところはなかった? 同調する部分はなかった?』


『……っ! ないですっ!』


手を振りほどいて、立ち上がった。
先生はじ、とあたしを見上げて。


『違うのなら、いい。俺のバカげた錯覚なら、その方がいい。
君を気にするきっかけになったのはそれだが、佐和を求めているんじゃない。佐和とは違っていてほしいと思っている』


あんな幸せを望んで欲しくない、そう静かな声音で続けた。

先生は、本気であたしと佐和さんが似ていると思ってるんだろうか。


『宮本と離れる、という選択肢があることを忘れるな。
宮本だけがお前の唯一の男じゃない。
宮本にとって、お前が唯一の女じゃないように』