だんっ、とテーブルを激しく叩いた。


『兄貴と死ぬなんてバカな真似してさ。あいつは佐和の気持ちに応えたことないんだ』


『それも、違うと思う』


おばさんがぽつりと言った。


『私は、あなたたち兄弟を子どもの時から知ってるわ。晃平くんは、人の気持ちを利用するような子じゃなかった。
あの結婚だって、きっと、悩んだ末のことよ』


『人は変わる……っ』


『……二人がどうやって、発見されたか知ってる?』


『え?』


ふいに言われて、戸惑う。
ただ、二人は共に焼け死んでいたとしか聞いていなかった。


『リビングの、ソファーにね、いたんだけど。二人は固く抱き合ったまま、見つかったのよ。
晃平くんは、しっかりと佐和を抱きしめていたの』


抱き合って?


『もし本当に、晃平くんが佐和を利用していただけなら、抱きしめたりせずに、逃げたんじゃないかしら?

私は、最後の最後で、晃平くんが佐和と逝く道を選んだのだと、思ってる』


おばさんの目尻に、涙が滲んだ。

兄貴は、最後には佐和を選んだ、のか?