月下の逢瀬

細切れのような、記憶の断片。

時間、場面に統一性はなく、まだらにしか覚えていない。


兄貴の遺影を、祭儀場の隅からぼんやり眺めているところ。

母親が泣き崩れている、病院の霊安室。
兄貴は独りきりで寝かされていて、何故横に佐和がいないのかと思いながら、それを見ているところ。

実家の玄関。
地面に額をこすりつけんばかりに土下座して、泣いている佐和の母親。
明るく朗らかだったおばさんの背中が一回りも二回りも小さく見えて。
たまらず駆け寄る俺を止めた、母親の顔。

小さな骨壺に入った兄貴。
それを見ながら静かに涙を流す祐子さんの腕には、生まれたばかりの子どもがあどけなく眠っている。
ああ、この子の父親を、佐和は奪ってしまったのか。
閉じられた小さな両眼を、じっと見つめた。