その10
多美代


「このクソ野郎ー!」

私は北田に向かって殴りかかった

と同時に、他のメンバーも一斉に取っ組み合いとなった

「テメー、バカ学校のズベタめ!集会の前に病院送りだ!」

私は北田に正面から蹴りを一発ぶち込み、たじろいだところで、髪の毛をむんずと掴み、頭突きをくらわした

「ヒィー!」

頭を抑えて、両膝着きやがった、この野郎

「おらー!立ちやがれ、テメー!」

私はさらに北田の髪の毛を引っ張り、無理やり立ち上がらせた

「どうした!こんなもんでへばってんのか?あー!」

さあ、もう一発お見舞いしてやる…

そう気合いを入れて、こぶしを握った時、数人の先輩が駆け付けた

「こらー!何やってんだ、お前ら…、やめろ、やめろー!」

先輩らの制止で、みんな、咄嗟に組み合った相手から離れた

私も北田の髪の毛から手を離して、先輩に向かって姿勢を正した


...



「おい、大丈夫か?」

先輩は、うずくまっている北田の顔を覗き込んでる

「はい…」

あ…、この人、湯本先輩だ…

「バカヤロー!大事な集会前に、さっそく騒ぎ起こしやがって!」

湯本先輩は、私に向かってどでかい声で怒ってる

「あっこ、どうしたのよ!何事なの?この騒ぎは…」

「ああ、先輩…」

わー、相川先輩も来たよ

他にも、この騒ぎで何事かと、先輩らが続々集まってくるし…

まずいなあ…、このシチュレーションじゃあ…

私は北田に目をやった

ヤツ、尻もちつきながらも、薄ら笑いを浮かべてる…

クソッ…、仕掛けたな…!