その8
多美代



梅雨時期にせっかくの五月晴れだって言うのによー…

集会前の火の玉川原は、大荒れ模様だわ


...



異常事態は川原に着いてすぐ、まさに一目瞭然だった

はー?

なんで、もうテントが出来上がっちゃってるんだよ!

当初の段取りでは、私ら新総長付の親衛隊とレッドドッグスから、各々3人が先発隊で午後4時に集まり、テントの設営にかかるという話だったぞ

ところがなんだよ、コレ!

予定時間に現場へ到着したら、なんと終わってんじゃんか!


...



「多美ー!大変だよー、えらいことになってるわよ!」

同じ親衛隊1年のアカネとルミが、血相を変えて、バイクを降りた私に駆け寄ってきた

「アカネ、ルミ…、これは一体、どうなってるんだよ!」

私は、先に現場にきていた二人に問いただした

「ドッグスの連中だよ!アイツら抜け駆けしやがった。3人って約束だったのに、6人出してきたんだ。私とルミが来た時には、OBの人たちと設営終えちゃってたんだよ」

「何だってー?ふざけやがって!」

私は一瞬で頭に血が上っちゃったよ

そして、私ら3人は一緒にテント前に走って行った


...



テント前には、作業を終え、タオルで汗をぬぐっているドッグスの連中が確かに6人いた

連中、こっち見てニヤついてるわ

「おい、お前ら!3人づつで4時からって約束だろ!なんだよ、これは!」

私は奴らに詰め寄った

すると、ショートカットで髪を染めた、私と似た体格の女が腕組みしながら賜ったわ

「ああ…、私ら、今回いろいろと迷惑かけちゃったからさ。申し訳ないと思ってね、人数多めに出して、あんたらに楽させてやろうと思ってさ…。いやあ、でも、ちょっと張り切りすぎちゃったかなあ、ハハハ…。なあ…」

コイツだな、赤隊の女をボコったヤツって…

確か、北田久美…