レッドリンチ!豪雨の夜が発熱少女たちの岐路だった
その1
馬美



4月×日

昨日は悪夢の一日だった。もしMがあの大男を刺していなかったら、服を引き裂かれ裸にされた私は、最後の一線を守れなかっただろう。私たちが無事に家に帰れたのも、彼女のおかげだ。Mが話をつけてくれた。おそらく、何らかの条件は呑んだと思う。だがKは、こんな目に遭ったのはMが誘ったからだ、Mは今頃もう殺されている、Mのせいで自分たちも殺されると、Mを激しく罵っていた。Kは自分達の体を奪った男に命乞いをして、助けてもらうしか手立てがないと、私とSに迫った。だが、それから間もなくして解放された途端、KはMに泣きながら抱きついて、命の恩人だと感謝してた。











5月×日

先生は私の身辺を、興信所に調査させていたらしい。監禁された日のことも知っていた。私は正直に言った。ウリはやっていないこと、体は奪われなかったことを。しかし、そんなこと、彼にはなんの説得力にもならなかったようだ。ウリをしないで金を奪ってりゃ、逆に、その方が罪は重い。そんなことをやってれば、ヤクザに監禁されて暴行を受けたのも自業自得だと。私は彼にしゃべったことを後悔している。あの日のことは決して口外しないと、4人で固く誓ったんだ。つい、自身の潔白を優先して、私は仲間を裏切ってしまった…。




5月××日

ウワサはあっという間に広まった。それは、時間と共に様々な脚色がされていった…。先生は、軽い気持ちで私の話を口外したんだろう。漏らしたのが私だということは、他の3人にはいずれ知れる。私はとんでもないことをしてしまった。一番迷惑をかけてるMにだけは、話した方がいいと分かってはいるが、勇気がない。どうしよう…。




6月×日

私に対するKの態度が、あからさまに変わった。集会の翌日から急に。そして、私の耳にも届いた。Kはあの評判のよくない先輩にお金を払って、私が秘密をしゃべってたことの裏付けを取ったと…。それを何に使うかは明らかだ。漏らした私が悪いのは承知してるけど、汚いよ。あの時、自分はMのことを見捨てて、自分を犯した男に命乞いしようとしてたくせに…。もし、Mが私を許してくれて、サブにとりたてられたら、Kを排除するよう具申してみよう。損得だけでなんでもするような、あんなヤツがいたら、チームはロクなことにならないよ…。