その7
麻衣



私は”もう一つ”も、同じく、ゆっくりと丁寧に理詰めで説明した

「よし、あんたの話はよくわかった。まあ、大丈夫だろう。何もさ、新体制の初っ端からいがみ合うのは、みんなも望まないだろうしな。ああ、念のために聞いとくけど、同じこと、他の幹部に言ってないだろうね?」

「真澄先輩だけです!」

私は背筋をただして言い切った

ここでまた、クシャ顔が出た

へへ、どうやら取り付けたな…

ではと…、今日はシナリオ通りで行ってやれ


...



「じゃあ、私は先に行くよ。もっとも、寄り道して行くから、火の玉に着くのはあんたの後だろうけど…」

と言って、先輩は席を立った

で…、先輩がテーブルの上にあるレシートを掴もうとした瞬間、私は素早くそれを奪った

「こっちの勝手なお願いで、お時間取らせたました。後はやっときますんで…。お疲れ様です」

私も立ちあがり、元気にあいさつし、頭を下げた

「ああ、気を使わせて悪いね。なら、また後でな…」

うわー、そう言って木戸ちゃん、ウインクしてるよ~

どういうセンスなんだか、この先輩…


...



それから20分ほど時間をずらし、私は店を出た

ここから火の玉川原までは、バイクだと15分ちょっとで着く

うーん、今日はかなり派手な展開になるだろうしな

もうひとテンション、上げたいとこだなあ

よし、ぐるっとひと回りして、すっ飛ばしてみるか…

犬も歩けば族に当たるってヤツで、この時間帯なら集会に向かう”誰か”とは接するはずだしさ

出会う奴ら、誰だろうが、遠慮なしに吹かしてカマかけだ


...



思いっきりバイクで飛ばしてる時、気分はケムリ吸わなくてもイッチャてるよ、私

だけど、目も耳も、五感はすべて、ビンビンだ

音は、ブンブン、ブーンだ

梅雨が一休み中の風は、何ともバイクと相性が良い

最高だ!


...



お!いたいた…

さあ、ブチ抜きだゾー

南玉らしきモンを都合、3組、トータル単車8台をぶん抜いた

おそらく、全部先輩だわ!

ははは…

という訳で、今日はよろしく!