その6
麻衣



今日の総集会で、この先輩に動いてもらいたいことは、二つあった

まず私は、先週末に伊豆でドッグスの集会を、無断で開いたいことを告げた

「先輩の耳には、すでに入ってるかもしれませんが…」

先輩は来たなって感じで、再び異様な笑みを浮かべた

それ、当然”入ってる”のは承知で言ってる

と言うより、私が”入れた”

もちろん、間接的にだが

「ああ、なんか泊りがけだったってね。リッチだねえ、さすがに。ヒヒヒ…」

どうでもいけど、異様なそのクシャ顔、勘弁だよ…(苦笑)


...



「ご存じの通り、高原先輩がああいう事情で抜けられましたんで、後任を授かった私は1年坊ですし、ここは早急に新たな結束を図る必要があると考えました。そこで、総集会までに、”その場”を設けることにしたんです。あくまで自主的にという気構えで…。従って、上の人には、事前に承認は得てません。許可を求めれば、止められるのは分かっていましたので…」

私は理詰めで、ゆっくりと丁寧に、説明というか釈明を続けた

「…会合では、考えた末、覚悟の薄いメンバーには振るいにかける目的で、ある”踏み絵”をさせました。その結果、18人のメンバーは10人に減りました。一方、外からスカウトした強者1名が加わりました。で、合計11人となり、人数は減りましたが、ビルドアップはされたはずです」

先輩は、紅茶をすすりながら、へえー、ふんふん…といった調子で聞いている

「今日、新総長初め、上の方々からは、厳しい叱責を受けることは承知しています。責任を求められれば、従うつもりです。ただ、新OGの木戸先輩には、今後の組織拡大という深慮がおありだと思っておりますので、こうして事前に…」

例の先輩がどの程度、どういう言い回しで木戸ちゃんに”あらすじ”を伝えたかは、定かではない

だが私はカンで、こういう話し方が一番”効果”があるだろうと判断した

要はさ、こういう輩には、アリバイとか前提とか形式とかの、つじつまを合わせる”材料”を提供することが”重要”なんだ


...



「一応、あんたの”純粋な動機”は、汲めるべきものがあると思う。なるべくうまく収めるよう、今日は動いてみましょう」

これは了解と受け取っていいな

まずは一丁、クリアだ

さて、意気上がる新OGのこの人には、続いてもう一つのお願いだ