その2
真樹子



とは言え、麻衣さんはちゃんと計算してるんだよね

この二派の対立を、南玉内部の連中全員が、必ずしも忌避しようとしないであろうことを…

フフフ…、荒子一派の一極化を警戒するメンバーからすれば、その牽制役としてドッグスは使える

そうなればそいつらは、一時的でも、ドッグスをプッシュする可能性だってある

その延長では、麻衣さんの側から見た、組織内の敵味方を一変させる局面も作り得る

全く抜け目ないよ、そういうところは

イケイケの単細胞ども、そうとは知らず、麻衣さんの手のひらに勢いよく飛び込んでいくことだろう

そして、この夏、ここホットスポットは混沌となるはずだ

...



さて…、また私にしかできない”仕事”というか仕掛けを、麻衣さんが持ちかけてきたわ

もっともそれって、ストックされていたトラップオプションだったけどね

ただ、私の中では、もう少し先の着手を想定してた

なのだが、麻衣さんのエンジンがかかっちゃった

原因は”あの女”の存在だ…


...



今日、麻衣さんは、その横田競子と直接、面と向かって話をしてきたようなのよ

表向きは入院中の見舞いということで

その結果、横田はミンチ刻みにするくらい、念入りに潰してやろうということになったらしい

腕の打撲くらいでおとなしくなるようなタマじゃないと、”太鼓番”を押していたよ

あの女、バカだねー

麻衣さんを本気にさせちゃったよ

夏が終わるころには、ボロ雑巾にされるわよ、アイツ

いい気味だけど、ハハハ…


...



で…、ちょうど、私の仕込んだネタが使えるということで、早速取り掛かることにする

まあ、このオプションは私にとっても、肝いりで取り組めるわ

そう…、あの廃倉庫で麻衣さんが私に約束してくれた、3人へのリベンジ…

”無傷”の残り一人もヒット対象だし、セットで射程距離内に入った訳だから(薄笑)