その1
真樹子




麻衣さんには、伊豆から戻ってすぐで悪かったが、例の先輩と引き合わせをした

先輩は、麻衣さんに異様なほど関心を持っててね

前々から会いたがっていたから

30分ほどの場だったけど、先輩は麻衣さんには終始、目を細めていた

「…しかし、とんでもない高校生が出てきたもんだねぇ…」

この人、すっかり麻衣さんが気に入った様子でね…

「マキ、あれとは離れちゃいけないよ。真澄は”顔見せ”をはやっるけど、今はまだ時機じゃない。その辺は、私から言っとくからさ。まあ、南玉の”全体”が終わった後、その状況をよく見てからじゃないとね。いろいろとさ、動きがあるでしょうから…」

確かにそうだ…

先輩が言うように、3日後に火の玉川原で開催される、新体制下での南玉連合の全体総会で”今後”が見えてくる

麻衣さんとドッグスにとっては、最初の試金石になるわね


...



麻衣さんは当初から、新総長の私設部隊となる西咲学院の新入を軸とした親衛隊が、レッド・ドッグスへ噛みついてくると睨んでいたから…

なにしろ、特攻隊長は荒子が前職継続で、しばらくは総長と兼任みたいだし

要は、限りなく特攻隊イコール親衛隊になる訳だから、実質、組織構成的には矛盾が生じるんだよね

それに今般、特攻隊長の直属となって、南玉公認チームとしてのドッグスは立ち位置が不明瞭だ

下手すりゃ、埋没してしまう余地すらある

だから今後を見据えれば、どうしたって親衛隊連中との軋轢は避けられないよ

衝突するのは火を見るより明らかってことで、その舞台がついに訪れるということだ

おそらくは、上級連中がたじろぐくらい、騒然となるだろうね…

麻衣さん、遠慮なしで構える気らしいから

うふふ…、麻衣さんは血管浮きたてたようなイケイケ軍団を、伊豆でビルドアップされたドッグスの格好のスパーリング相手に見立てているよ

北田とかがここに来て、どんな立ちまわりを見せるか、私もこの目で見たいもんだけどね…