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止まらない狂った血/二人の少女に訪れる相互発火点は決した
その1
ケイコ



先程、亜咲さんが病室を訪れてくれ、お別れを済ませた

とても辛かった

頭で考えていたよりはるかに…

やるせない気持がこみ上げてきた

それは、どうしようもないほどだった

まるで今生の別れのような…


...



高原亜咲さん…

彼女は、私にとって実の姉そのものの存在だった

生まれてからずっとお隣に住んでいたし

二歳年上の亜咲さんも、小っちゃい頃から私を妹のようにかわいがってくれたよ

今までずっと


...



実は私には兄がいた

でも、生まれて数週間でこの世を去った

生きていれば、亜咲さんとは同級生だった

一方、亜咲さんにも本来なら、私と同い年の兄弟がいるはずだった

亜咲さんのお母さんは、流産しちゃってね…

その子は、この世に生まれることが出来なかったんだ

私と亜咲さんの親は、互いの失くした子供をそれぞれ、私たちと重ねあわせていたと思う

私も亜咲さんも、お母さんが二人いるようだって、よく話していたし

そんなこともあって、私たちはそれこそ本当の姉妹のように育ったんだよね


...



私たち二人は、年中一緒に遊んでた

だけど喧嘩なんかは、一度もしたことがなかったなあ

私たちの親が購入した建売二棟現場は、田んぼの中にポツンと建っててね

一応、都内なんだけど、周りには人が住んでないんだよ

それでさ、道路を挟んで埼玉ということで、遊び仲間はいつも”県民”だった

小中学校は遠くてさ…

亜咲さんと二人で、何十分も歩いて通ったなあ

学校へ行きゃあ、埼玉菌がうつっちゃうとかって、いじめられてたわ

まあ、私も亜咲さんもそんなもん突っぱねるくらいのお転婆だったから、どうってことなかったけどね

でもね…、やっぱり小さい頃のそういうのって、根深かったみたいで…

”東京もん”には、あまりいい感情がなくてさ

亜咲さんも私も、高校は埼玉の学校に通うことになっちゃった(笑)


...



高校へ進んだ亜咲さんは、すぐに南玉連合入ってね

そんでモトクロスで優勝するわ、映画のスタントもこなすわで、バイク乗りとして名を馳せていった

私はしょっちゅう、亜咲さんの”後ろ”乗っけてもらってた

だからさ、友達がみんな羨ましがっててさ


...



「…そう言えば、最後だからって麻衣を一度だけ乗せたよ。ああ、喫茶店の前でばったり会った時、あの後だったわ。ケイちゃんを年中うしろ乗っけてたって言ったら、アイツ、ヤキモチ焼いてる子供みたいな顔してさ、ねだってきてよ(苦笑)」

さっき、病院のロビーでいろいろと話をしている流れの中で、亜咲さんはぽつりと言ってた

「…高速乗って、加速する最中だったよ。私の体にギュッと力入れてつかまってたアイツ、”お姉ちゃん”って口にしてた。小声だったけど、風向きもあって聞こえたんだ。なんでそんな言葉が出たのかは分からないけど…」

亜咲さんはそう言ってはいたが、本当は分かっているんじゃないかな