その1
麻衣



翌日の朝は、昨日の悪天候が嘘のように晴れ渡っていた

残留組9人と外部からの祥子、それに私の11人による”決起”会合は、朝まで夜通しだった

とは言っても、11人の口は喋る方より、食う方に熱心だったわ(笑)

しかし、決めるべきことはしっかり決めた

まず、祥子が私の副官となり、皆も承諾したこと

そして、昨夜指針を示した私の進むべき路線に、全員が認識を共有した

さらに、これから私らが都県境を席巻していくという気概を確認し合った

その過程において、紅組の威光に頼りきりの今の南玉を、あくまで内部から質していく

こういった理念は従来から掲げているはずの新総長荒子さんを、私らが率先して”その道”に誘導する

仮に同調を得られない場合、力づくで南玉を変革していく

まあ、こんなところだわ


...



これに着手となれば、真っ先に私らの前に立ちふさがってくる最初の”障害”は、一目瞭然だ

で、そいつらとの初遭遇は、来週の全体総会の場になることも…

まあ、久美レベルの頭でなきゃ、普通にわかるよな(笑)

朝まで熱く語り合い、私はこの場にいるメンバーでぶつかる覚悟を新たにした


...



まず、祥子は頼れるタフガイだ

目の前で馬美を倒した強者の佇まいに、残留組の連中は”外様”という先入観など、すでに取っ払われていた

このダブリの同級生には、初対面のここにいるメンバーを懐に引きこむだけのオーラも、十分に兼備わっていたようだ

一晩中喋りまくり、はしゃいでいた久美はムードメーカーだ

その久美は、どうやら祥子をナンバー2として迎え入れた様子だしな

そうとなると、お調子者のこいつは揉み手で持ち上げまくるだろう

加えて、残留組の多くは久美の取り巻きなんだよな

連中は久美の指さす方向には、今のところ、そのまま右倣えだ

故に、久美が私の代理人となる祥子に仕えてくれれば、私の体制下のドッグスは理想的なピラミッド機能を構築したに等しい

こうなると、あらゆる意味で私が動きやすくなってくるな

なにしろ当面の私は、同時多角方面で手を打っていかなきゃならないからね