麻衣、磁場と化す序幕/それは一途たる純な狂気
その1
剣崎


”ダーティー・ビューティー①”

「これが今回のオペレーション名です!」

その計画書を持ってきた時、麻衣はすました顔で言ってのけたわ

俺は思わず吹き出しそうになったよ

全く人を食ったネーミングだと、鼻で笑ってたな、俺

だが、終わってみると、なんだか妙にマッチしてる気もする

不思議なもんだ(笑)


...



相和会本部で、俺は相馬会長に今回のオペレーションとやらの報告をした

併せてレオでの麻衣の会長への非難発言、そして翌日の訂正も添えた

会長はここ数日体調を崩し、せき込んでいた

だがその両眼は、こっちの目がやられそうなくらいの眼光を放っている

そして、会長はその目でニヤリと微笑を浮かべた

長年この人のそばにいるからわかるんだが、満足げな時によく見せる表情だ

どうやら会長は、今回の麻衣を高く評価しているようだった


...



「剣崎、それで、麻衣の”次”はどうなんだ?」

俺は”それ”も、麻衣からの言葉通り伝えた

俺でダメなら、麻衣自身が直談判に赴くと言ったことも…

「あのヤロウめ…」

今度はいたずらっぽく笑っていたよ、この人

会長はしばらく布団の上で、腕組みしたまま目を瞑っていた

無精ひげ姿も精悍だ

どんな姿でも、絵になる人間だなあ…

俺はなぜか、そんなことに考えが及んでいた

「よし!これ全部、承知したと麻衣に伝えろ」

「いいんですか、会長…」

「ああ、思う存分やらせてみろ。アイツの暴れている姿が、今の俺の活力みたいなもんだ。ゴホッ、ゴホッ…、遠慮なしでやれと麻衣に言っておけ」

そう言うと、会長は横になった