「七年後には、破綻すると?」
「はい。今のままでは、確実に破綻します。この数字はあくまで売り上げ高だけです。収支決算後を見ると、明らかに赤字です。何故なら、締め日がそれぞれ違っています。締め日は毎月10日となってはいますが、休日が絡む場合、海外では支社によって前倒ししていたり、休日明けにしていたりと統一されていません。休日明けの締めを慣行しています。統一を図るには、海外の場合は日本時間に統一し、休日にあたってしまう場合はその前日というようにしなければ正確な数字は出てきません。また国内におきましても、子会社及び各支社の赤字を本社利益で補填している形になっておりますが、先日申し上げました通り、子会社を独立採算制と株式分離を図ることで本社の負担をなくし、子会社の赤字は子会社内で埋める形で明確な線引きをしませんと……」
「赤字が酷ければ株式を売却、若しくは……」
「はい。採算の取れない場合は致し方ないですが、それを回避するためにも早急なご決断を」
一介の新入社員が社長に向かって、社運が掛かっているというのに決断を迫るのは如何なものかと旗から見たら、さぞ滑稽に見えるだろう。そして若輩者が偉そうにわかったことを言うなと言われても当然といえば当然で致し方ないのだろうが、ここまで末期になってしまった会社を立て直すのに、変な柵や人間関係がない新入社員の俺だからこそ言い出せる部分もある。
「わかった。臨時役員会を年内に招集するので、この資料を役員分刷って持ってきて欲しい」
「はい。承知しました。お忙しいところ、お時間を頂きましてありがとうございます」
流石、社長だ。もう残り僅かな年内なのに、役員を招集する力がこの人にはある。立ち上がってお辞儀をしながら、初めて天下りではない社内から社長になったこの人の企業のトップたる所以を肌で感じていた。きっと社長も、この会社を大切に思っている。