不器用なあの子は、今日も一宮くんに溺愛されている。








「今日の取材ってどこだったかな。夕夏、バスケラボって言ってたっけ」


「バスケラボ!」


「ん?んんん?伊都ちゃんもしかして知ってる?」


「はい!私、実は月刊バスケラボさんの大ファンで、毎月購読しています!おかげで律くんのことも、バスケ部のみなさんのこともかなり詳しくなりました!」


「え、本当に?うわー、今さらめちゃくちゃ恥ずかしくなってきた。伊都ちゃんが読んでるなら、これからはもうちょっと真面目に受け答えしよ」


「え、そんな!今までの分もとても素敵でしたよ!」




両手で顔を押えながら「うわーうわー恥ずかしいー」と繰り返す彼は、手の平の隙間からチラリと私を見て、そして何かひらめいたようにパァッと顔を明るくしてみせた。


「じゃあ伊都ちゃんも一緒に来る!?」と言って。





「い、一緒に!?」


「うん、おいでよ。文化祭の記念写真撮ってもらお」


「え、ダ、ダメですよ!律くんの大事な取材にお邪魔するわけにはいかないです!そ、それに私の心臓が持ちそうにないです」





律くんのお誘いをどうにかお断りして、残念そうに去って行くうしろ姿に手を振った。


グッと近づきたいだなんて、そんな図々しいことは思わない。

だけどこのくらいの距離で、ずっと律くんを応援していたい。



そう思いながら、彼に託された『ポッテリポテポテ・ポテトフライ』の看板をキュッと握って、私は委員会の仕事に走って戻った。


律くんが言っていた、"優夏"さんという人のことほんの少しだけ……気にしながら。