不器用なあの子は、今日も一宮くんに溺愛されている。






「―――……律!?」


見回りの仕事も終盤、元いた階段の踊り場に着いた途端に響いた声は、私よりも高くて、とても澄んだ綺麗な声だった。





「……あぁ、夕夏」


「ちょっと、アンタどこ行ってたの!みんな律のこと探してたんだよ!?」


「ごめんごめん。ちょっと見回りにね、行っててね」


「そんなの律の仕事じゃないでしょ!13時から部の取材だって昨日散々言ったのに!」


「あ、忘れてた取材」


「やっぱり!最低!ホント律は昔からいっつもふらっとどこか行っちゃうんだから。早く戻るよ」


「場所って視聴覚室だよね?先行ってて、すぐ戻るから」


「でも」


「お願い」




そう言って律くんはもう一度私のほうへ向き直って、ニコッと笑いながら手を引いた。

そして階段を軽快に降りていくから、遅れないよう必死にあとを追う。