不器用なあの子は、今日も一宮くんに溺愛されている。








バスケ部専用の体育館は、足を踏み入れるなり大勢の人と熱気で溢れていた。


途中で何度も人の渦に揉まれながら息も絶え絶えに、ようやく真実ちゃんの元へ辿り着いた時にはもう、スターターの選手たちはコートの端で名前が呼ばれるのを待っている状態だった。





もちろんその中には、律くんがいる。


雑誌の写真でしか見たことのなかったユニフォーム姿を今、遠目ながら初めて目の当たりにした瞬間に、ドクリッ、と1回だけ大きく胸が脈打った。




律くんだ、あそこに律くんがいる。


1階、2階と用意された応援席からは絶えず律くんの名前がいたるところで呼ばれている。


中には大きなハート形の団扇に大きく名前を張り付けている人もいるから驚いた。






「……すごい」


律くんはすごい。


今日までずっと諦めずに、ひたすら頑張って今の地位を掴み取っているのだから。



私のお父さんのことを尊敬していると言っていたけれど、きっと天国にいるお父さんにも伝わっていると思う。