不器用なあの子は、今日も一宮くんに溺愛されている。







今日も相変わらず、私はツイていない。


何よりも私はともかく、律くんに被害が及んでいたら大変だ。





「ちょっと待っていてくださいね!」


大急ぎで館内に戻ろうと立ち上がった私は、ローファーのつま先をコツンと芝生に打ち付けた。


そして大きく一歩足を伸ばしたとき、その流れを断ち切ってスッと片手でストップをかけた律くんは、同じように私に倣って立ち上がって、そのまま肩に手を置いて座らせる。


「伊都ちゃんの方が大事件じゃん」と、笑って。





「え?」


「ちょっと目、瞑ってて」


「あ、あの律くんっ!?」



シーッと私の口を人差し指で抑えて、彼は真っ白なワイシャツの裾でポタポタと私の頬を滴るジュースを拭きはじめた。