絵本を読んでいたということは、もしかしたら男の子のお母さんは児童向けコーナーの方にある、もう1つの方のトイレに向かったのかもしれない。
やっぱり一緒に探してあげようか、だけど男の子のお母さんも同じように探していたらさらに出会えなくなってしまうんじゃ……。
困り果てた、と頭を抱えて何か策を練ろうとしていたとき。
「──キミどうしたの?迷子になっちゃった?」
突然、頭上からふり降りてきた声。
その声に、男の子よりも先に私が驚いた。
「う、うん。ママが心配でねっ、見にきたんだけどいないんだ」
「よっし。じゃあ3人で一緒にママ探しに行こ」
「いいの?ありがとうお兄ちゃん!」
「泣かなかったんだな、偉いな。ほら、おいで」
もう何度目だろう。
今では姿を確認しなくたって、誰の声なのかすぐに分かってしまう。
……律くんだ。
「伊都ちゃん、行くよ」
「あ、はい!」
男の子の手を引きながら、同じように私の右腕も掴んで先導してくれる律くんを見て、ホッと肩の荷が降りたのはもう、無意識だった。



