不器用なあの子は、今日も一宮くんに溺愛されている。







今ではすっかり行き慣れたトイレを出て、手洗い場の鏡に映る自分と見つめ合う。


……うん。

あのころの私よりも、今は少しずつ成長している気がするよ。





「あの、お、お姉ちゃん……っ?」


「え!?」


「僕のママ、知りませんかっ」



トイレを出てすぐ、震えた声で今にも泣きだしそうな表情でそう声をかけてきたのは、近くの幼稚園の服を着た1人の男の子だった。


私のスカートの裾を遠慮がちに握りながら、必死で涙を堪えている彼は、今にも泣き出しそうな表情で私の顔を見上げる。




もしかして、迷子……だろうか。



「ど、どうしたの?お母さんは?」


「一緒に、絵本読んでたんだけどっ、お母さんがトイレに行っちゃって。待っててねって言われたんだけど僕、心配で見にきたら、どこにもいないんだっ」


「……!」




そ、それは大変だ!完全に迷子だ!


一緒にいなくなったお母さんを探してあげることがベストなのか、それとも管理人さんに伝えた方がいいのか。




「あ、えっと……そうだね、えっと」


私は1人っ子で、普段から小さい子供と触れ合うことが極端に少ないせいで、どんなふうに接してあげたらいいのか分からない。


とりあえず安心させてあげねば、と彼と同じ目線までしゃがんで、ゆっくりと頭を撫でた。