そう言って笑う律くんに向かって、どんなに降ろしてくださいとお願いしても、彼は構うことなく「先生、この子血が止まんないみたいなんですけど」と言いながら結局最後まで私を離さなかった。
先生の後ろに着いて保健室へ向かう間ずっと、彼に抱きかかえられたまま申し訳なさいっぱいの気持ちの中に、少しだけ、ドクリッ、ドクリッと一定のリズムで刻まれる律くんの鼓動に安心感を覚えた。
「じゃあ先生は南野さんを病院に連れて行くから、一宮くんは教室に帰っていいわよ」
「分かりました。よろしくお願いします」
「とりあえず車移動させてくるね」
保健室から出て行く先生を見送ってすぐ、再び私の元へ歩み寄って来てくれる律くんは、本当に優しい人なんだと思う。
ただ、不幸体質は人に移ると聞いたことがあるし、何より律くんと出会ってからこの短期間のうちに、私は彼に相当な迷惑をかけ続けてしまっている。
今日はテスト前日だと言うのに、クラスのHRにも遅刻させてしまっているし、私が盛大にスッ転んで鼻血なんて出したせいで悪目立ちさせてしまった。
それでも律くんは笑顔で、「鼻はどう?まだ痛い?」と心配してくれるから、自分の不甲斐なさをこの上なく呪って下を向くことしかできなかった。



