不器用なあの子は、今日も一宮くんに溺愛されている。







やっぱり律くんは気付いているんだ。


小さいころ、私との出会いを。





「あ、あの……」


「うん?」


「私その、律くんと」


「先生早くこっち!俺のせいで南野さんが死んじゃう!」





"昔、出会っていたみたいですね。"


そう言おうとした言葉を遮って、目尻に涙を浮かべながら大きな声を出すタケちゃんは、駆けつけてきてくれた先生を「早く早く」と誘導する。


その声を合図に、今度は律くんが私を抱えて「この話はまた今度しようね」と言って立ち上がったものだから、鼻の鈍痛も、羞恥心も、何もかも忘れて待ったを出した。





「ちょっと揺れるから、ちゃんと鼻押さえておいてね」


「じ、自分で歩けるので大丈夫です!降ろしてください!」


「まぁまぁ。このくらい大したことじゃないから。それより鼻、押さえてて。血、止まんなくなるから」


「わ、私身長もこのとおり大きいですし、イコール体重も重いということなので、律くんの足腰に影響するようなことはさせられません!降ろしてください!」


「だって伊都ちゃんはあの南野選手の子供なんだもん。身長高くて当然だよ」


「……っ」