不器用なあの子は、今日も一宮くんに溺愛されている。






あまりの至近距離に、律くんの石鹸のにおいが鼻をかすめる。


ドキドキが止まらない私は、どうにか落ち着こうと視線を下に向けた途端。


ポタリと、真っ赤な血が滴った。

そしてそれは、律くんの手の甲に落ちていく。




「……へ?」


「伊都ちゃん動かないで」


「ぎゃああ!律くん、離れてください!」


周りを気にせず驚きの雄叫びを上げてしまったのは、決して私の鼻から大量の血が出ていたからと言うわけでも、それを誰かに見られているという羞恥の念からでもない。


鼻を抑えてくれている律くんの手に、私の血が付いてしまっていたからだ。





「───ねぇ伊都ちゃん、昔話する?」


「い、今はとりあえず離れてください!」


「幼稚園の頃まで溯ろうか。俺と、伊都ちゃんの出会いの日から」


「……っ!」