不器用なあの子は、今日も一宮くんに溺愛されている。









律くんのそのひとことに動揺した私は、両足を絡ませて転びそうになった。




「あっ」


あぁ、あれだけ委員長に転ぶなよって念を押されたのにな。


いや、それよりもまずはどうして律くんが私のお父さんのことを……。




キュッと目を瞑って、これから起こり得るであろう衝撃に備えた。







小さな頃から、数えきれないくらいこんな場面に遭遇してきた。


一生懸命頑張っていたことの全てが空回りしたり、予想もしていなかったことに巻き込まれたり、何もないところで躓いたり。





……だけどね、お父さん。


あの日からずっと、『いってくるね』と言って玄関を開けたお父さんが、未だに『ただいま』と言って私とお母さんの元へ帰ってこないことが人生の中で一番……予想していなかったことだよ。







「─―─大丈夫だよ、伊都ちゃん」


身体が傾いて倒れる寸前、間近で聞こえたそんな言葉は私をギュッと包んでくれた。






「大丈夫だからね」


「どうっ、して?父のこと、をっ?」


「しー。あとでちゃんと話すからm今はホラ、このままちょっとだけ俺に抱かれてて?」