不器用なあの子は、今日も一宮くんに溺愛されている。







少し前にお母さんが私を呼んだときと同じように、今度は私が大きな声でお母さんを「大変だ!」と言って呼ぶ。



お店の方の台所から「えー!?」と叫び返すお母さんをよそに、とりあえず私だけでもご挨拶をしなければと靴を履いたとき、自分の今の姿を思い返して……そして、絶句した。



勉強に集中しようと雑に束ねた前髪に、見た目よりも温かさを重視して買ってもらったダルマのようなモコモコな部屋着、そしてこれまたトンチンカンな色で温かさを重視した分厚いくつした……。



完璧なルックスの律くんを目の前に、私はなんてみっともない姿で出てきてしまったのだろうと激しく後悔が後を絶たずに襲い掛かってくる。





「伊都ちゃん?靴、履きかけだけど履かないの?」


「り、律くん…っ、私の方を見ないでください」


「え?」


「こ、これから早急に身支度をしてきますので……、その、少し待っていてくれませんか」


「え?父さんに挨拶するだけでしょ?そのままで十分だよ」


「だ、ダメです…!律くんのお父様にもそうですが、律くんにこれ以上こんな姿を見られたくないっていうか、その」


「えー、全然可愛いから大丈夫だよ。むしろオフなときの伊都ちゃんを見られてラッキー、ぐらいに思ってるんだけど」