「……いいよ。全部、聞かせて」
「……っ」
「伊都ちゃんの全部を、俺に教えて――?」
律くんと私の間にあるロッカーの扉は、建てつけの悪い音を鳴らしながら彼の手によってゆっくりと閉まっていく。
露わになった律くんは、白色がベースに金のラインで縁取られた練習用のユニフォームにジャージを羽織っていた。
背中に、エースナンバーの《7》を刻んで。
「……」
スゥッと息を吸うと、冷たい空気が流れ込む。
これを吐き出した時が……最後だ。
「私の、お父さんは……っ、海外遠征に行った先でっ、亡くなったんです」
「南野選手の事故のことは、俺もクラブの監督から聞いたよ」
「お土産を……っ、楽しみにしててねって、行ってくるねって、そう言って……っ、出て行ったんです」
「うん」
「でもお父さんは、帰ってこない」



