運悪く、学校初日の放課後清掃の担当になっていた私は、みんなが帰っていった教室をせっせと隈なく掃除していく。
小さいころからお母さんの喜ぶ顔が見たくて一生懸命に掃除を初めてきたけれど、今ではもう趣味の1つになりつつある。
だけど今は『なんで今日に限って私が当番なんだろう』だなんて、普段なら気にしないような不運にさえ感情のコントロールがきかなくなっている。
きっと余裕のなさや焦り、不安が募っているんだって分かっているのに、分かっていてもどうすることもできないから余計に胸が痛くなった。
「……っ」
律くんなら大丈夫。
元気な姿で帰って来てくれる。決してお父さんのようにはならない。
まるで呪文のように、繰り返し何度も同じことを唱え続けた。
「――伊都ちゃん?」
「……っ!」
途端、ビクッと身体がはねた。
ほうきを片付けようと掃除用ロッカーを開けてすぐに、ずっと会いたいと思っていたその人はいつもどおり、優しい声で私の名前を呼ぶ。
聞き慣れたはずのその声は、どうしようもないくらい私を強張らせた。



