不器用なあの子は、今日も一宮くんに溺愛されている。









「伊都ちゃん、すぐ病院に」


「おとう……さんっ」






私のお父さんは、海外遠征に行った先で事故に遭って……それから二度と戻ってこなかった。



あのときのことを思い出そうとする私と、自分を守ることに徹したもう1人の私が思い出さなくていいと言って対立する。




息が……、できない。




どんなに『大丈夫』『律くんはお父さんのときとは違う』と言い聞かせてみても、それでもどうしても同じように重ねてしまう。


重ねて、怖くなる。




律くんの言うとおり、私たちは10年以上も離れ離れになっていたけれど、それでもこうしてもう一度出会えた。


今は律くんが近くにいるのが当たり前で、こうして話ができることがだんだん普通になってきている。




だけどそれは決して普通のことなんかじゃなくて、律くんが必死で私を探してくれていた努力と……あとはもう、奇跡だ。






「伊都ちゃん大丈夫?どう、落ち着いた?」


「……すみません、取り乱してしまって。もう、大丈夫です」


「伊都ちゃん。明日の放課後、ちゃんと話をしよっか」


「……話、ですか?」


「うん。俺たちはまだ、お互いに知らないことが多すぎるみたいだね」