不器用なあの子は、今日も一宮くんに溺愛されている。








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あれだけ熱を帯びていた会場は、今ではすっかり人も捌けていて、少し前までの盛り上がりが嘘のように静まり返っていた。


片付けも終えて電気も消されている今、音のないここで、私は改めて試合の光景を鮮明にフラッシュバックさせていく。



目を瞑ると今もまだ、心臓がバクバクと変に脈打って壊れてしまうんじゃないかってくらいに踊り暴れる。






本当にただただ、怖かった。


月間バスケラボの編集部です、と名乗った人は、試合を振り返って「高校バスケの歴史に残る1戦だ」と言って戦評の締め括りの言葉にした。


どこかのテレビ局の記者さんは、「一宮くんが涙を流す姿を初めてみました」とインタビューの冒頭でそう切り出した。






彼は試合終了の合図と同時に、座り込むように倒れながら涙した。


たくさんのスポーツ雑誌に彼の姿は掲載されているけれど、こんな風に感情を露わにする様子は初めてだ。




きっとそのくらい、濃い戦いだったのだと思う。