「――律くん!て、きゃっ!!」
夕夏さんに教えてもらった控え室の扉を力いっぱい開け放ったと同時、突っ走った勢いそのままに足を絡ませて頭から1番先に入室してしまう。
けれどそんなどうしようもない私を、もう何度も、ごく当然かのように目の前で手を広げて受け止めてくれるのが――。
「――捕まえた」
律くんだから。
「逃げないで、伊都ちゃん」
「……っ!」
「もう少しだけ、こうさせて」
考えナシに突進してしまったせいで、ロッカーにドサッと凭れるように座って衝撃を吸収してくれた律くんは、スッポリと埋まった私をギュッと抱き締めて離さない。
火照るような恥ずかしさと、それでも律くんの中にいるという幸福感が一斉に私を襲う。
律くんに伝えたいことがたくさんある。
言わなきゃいけないことも、謝りたいこともたくさんあったはずなのに。
それら全て、声にならない代わりに抱きしめ返す力だけが増していく。



