不器用なあの子は、今日も一宮くんに溺愛されている。








奇声にも近いような夕夏さんの、悲痛の声。


誰もいない廊下に、波紋のように響いて広がっていく。





「……嘘なの。あたし、本当は律の彼女なんかじゃないの」


「え?」


「律がね……っ、勝つ理由はいつも南野さんなの」


「ご、ごめんなさい夕夏さん。なんのことだか話が分からな、」


「いいから律のところに行って!お願い!」


「……」

「律はね?あなたを追いかけて章栄に入学したの。瑠衣たちと同じ高校に入学すれば高校3連覇も夢じゃないって、プロ入りにも有利だって言われていたのにっ、それでもそんなことには一切目もくれずに、律は南野さんを探して1人離れて行ったの。だから今も1人で戦ってる」







気付いたら、私は走っていた。


夕夏さんに言われた部屋番号の控え室を目指して、とにかく走っていた。