「……っ、」
だけどこんなことを怪我で苦しむ達哉先輩の前では絶対に言えないから、無言のまま首を横に振り続けた。
「はい、これでオッケー。歩きづらいようなら車椅子貸すけどキミどうする?」
「そうですね、」
よっ、と立ち上がろうとする先輩の肩を一緒に支えようと手を伸ばした、その矢先。
ガチャッと勢いよく医務室の扉が開かれた。
一斉にその音の方へ視線を合わせると、そこにいたのは息を切らせながら走ってやってきた夕夏さんだったから、私は驚いてしどろもどろに言葉を零す。
「え、あの、どうして」
「南野さん……っ、ちょっと来て!」
乱れた呼吸を整えようとせず、彼女が私の腕を引いて医務室の外へ出るまでは一瞬だった。
どうしました?と聞けなかったのは、夕夏さんが泣きそうになっていたから。
大丈夫ですか?と問えなかったのは、どう見ても大丈夫な様子ではなかったから。
「今すぐっ、今すぐ律の元に行ってお願いっ!」
「夕夏、さん?」
「このままじゃ…っ、負けちゃう。立ち上がれなくなっちゃうから……っ。だからお願い!」



