不器用なあの子は、今日も一宮くんに溺愛されている。








会場内はだんだんと観客席が埋まっていき、カメラが何台も設置され始めて、この大きな体育館は瞬く間にたくさんの人の声で溢れ返る。





「伊都ちゃん!あたしそろそろ席に戻るね!」


「あ、はい!真実ちゃん、本当に助かりました。このお礼はまた必ず、」


「もー!伊都ちゃんは本当に律儀!律儀すぎるよ!友達なんだから、ひと言"ありがとね!"くらいでいーの!」


「……あ、ありがとう。真実ちゃん」


「うん、よろしい!じゃあ、またあとでね!」





元気いっぱいに去っていく真実ちゃんの背中を、ぼうっと見つめる。


泣いても笑っても、このウォーミングアップが終われば自動的に試合は始まっていく。





変な緊張感が煽ってくる中、私は昨日の準決勝を無事勝ち進んだあとに行われたインタビューがずっと、頭から離れず何度もリピートしていた。







「南野さん!そろそろウォーミングアップ始まるから、こっちに移動してね」


「……はい」





――さぁ、行かなくちゃ。