不器用なあの子は、今日も一宮くんに溺愛されている。









試合用のユニフォームに身を包み、『章栄高校バスケ部』と書かれたジャージを肩にかけるように羽織っている律くんは、ひと言そう言って静かに選手控え室へ向かっていく。




「……っ」


あまりに一瞬の出来事で理解が追い付かないまま、ハッと我に返ってお礼を述べようとしたころにはもう、声が届く距離に彼はいなかった。




本当は『頑張ってください』って、言いたかった。

『ずっと避けていてごめんなさい』とも、言いたかった。





だけど、大丈夫。


言いたいことは全て、この試合が終わったら言うんだって決めているから。




もう逃げたり目を逸らしたりしない。

最後にきちんと夕夏さんと律くんのことを祝福すると決めている。だから、もう。








「……大丈夫」


「あ、律のところのドジっ子マネさんじゃん」


「!?……る、瑠衣くん!?」