けれどそれは、1歩足を踏み出した途端にピタリと消え去る。
私が辿り着きたかったその場所に、なんの躊躇いももたない夕夏さんがいたから。
「律?ホラもう顔上げて。帰る準備しなきゃ」
「……んー」
「んー、じゃないよ。明日も練習あるんだから」
「伊都ちゃんは?」
「……え?」
「伊都ちゃん、どこ行った?」
練習試合に使っていたビブスを回収していた私は、律くんが顔を上げて目が合ってしまう前に走ってこの場から逃げた。
逃げたって何も変わらないんだってどんなに自分に言い聞かせても、2人を目の前にすると居ても立っても居られなくなる。
律くんを好きになってから、私はうんと弱くなった。



